取適法違反にならないために!中小企業が対応すべき変更点と注意点を解説

  • 2026.10.05
  • 下請法から取適法(中小受託取引適正化法)への改正
  • #制度改正
  • 長年、下請法(下請代金支払遅延等防止法)として親しまれてきた法律が、2026年1月1日より取適法(中小受託取引適正化法)として全面改訂し施行されたことはご存じでしょうか。

    単なる看板の掛け替えではありません。
    今回のコラムでは主な改正ポイントと企業として確認しておきたいことをご紹介いたします。

改正の背景―「構造的な価格転嫁」を実現するために

今回の法改訂では、用語そのものも変わり、「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に置き換えられ、「下請」という言葉が持つ上下関係のニュアンスを排し、対等な取引パートナーであることを法律の名前と用語の両方で示そうという狙いがあります。

なぜ今、大掛かりな改正が行われたのでしょうか。

背景にあるのは、労務費・原材料費・エネルギーコストの急激な上昇です。
中小企業が物価上昇を上回る賃上げを実現するには、コスト上昇分を取引価格にきちんと転嫁できる仕組みが欠かせません。

しかし現実には、価格交渉に応じない、あるいはコストが上がっているのに価格を据え置く、といった商慣行が根強く残っています。

今回の改正は、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を目的としています。

何が変わったのか―主な改正ポイント

1. 「協議しない一方的な代金決定」の禁止

これまでの下請法でも「買いたたき」は禁止行為の一つでしたが、今回はさらに踏み込み、代金に関する協議に応じなかったり、必要な説明・情報提供をしなかったりした結果として代金額を一方的に決定する行為そのものを明確に禁止にしました。
コストが上がっているのに何の説明もなく価格を据え置く、といったこれまでの「暗黙の慣行」に、正面から歯止めをかける規定といえます。

2. 手形払いの原則禁止

これまで一定の条件下で認められてきた手形による支払いが、一律禁止となります。
電子記録債権やファクタリングによる支払いについても、支払期日までに代金相当額(手数料等を含めた満額)を受け取ることが困難なものは禁止されました。

中小受託事業者が資金化までの期間を自ら負担させられる構造にメスを入れる改正です。約束手形自体の廃止が進む流れとも同じです。

3. 従業員基準の新設

適用対象かどうかを判断する基準は、これまで資本金の額だけでした。
今回、新たに従業員数300人、役務提供委託等は100人という従業員数の基準が新設されました。

資本金基準または従業員基準のいずれかを満たせば適用対象となるため、これまで資本金要件をクリアして規制の外にいた企業も、新たに対象に入ってくる可能性があります。

自社が「委託事業者」側に該当するかどうか、改めて確認が必要になる企業は少なくないはずです。

4. 執行体制の強化

事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言権限が付与され、公正取引委員会との相互情報提供の規定も新設されました。

これまで公取委中心だった執行体制が、各業界を所管する省庁も交えた「面的な執行」へと広がります。

まずは社内の取引状況を整理しましょう

  • 適用対象の再チェック
    従業員基準の新設により、自社の取引が新たに規制対象となっていないか
  • 契約書面の見直し
    代金の決定方法や協議のプロセスを、書面上どう記録するか
  • 支払条件の見直し
    手形払いを行っている場合、現金振込等への切り替えスケジュール
  • 物流取引の洗い出し
    運送委託が新たに対象となるため、荷主側の企業は特に注意が必要
  • 社内体制の整備
    価格交渉の申し入れに応じるプロセスを社内でどう設計する

公正取引委員会は取適法の適用対象を簡易に確認できる診断ツールなども公開しており、まずは自社の取引を棚卸しすることから始めることが必要です。

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最後に

「下請法」から「取適法」への改称は、単なる名称変更ではなく、発注者と受注者の関係を「対等なパートナー」として再定義しようとする姿勢の表れです。

会社によっては手形払いの禁止や協議義務の明確化など、実務への影響は決して小さくないことも考えられ、委託事業者・中小受託事業者いずれの立場であっても、対応が必要です。

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